2011年1月29日土曜日

濃昼の滝 2011.1.29

濃昼の滝。
海岸線のゴーロ石の上をアイスのブーツでよろよろと歩きながら向かうとその滝は現れた。
ほぼ垂壁のバーチカルなアイスクライミングが出来る滝だ。
最初の印象。
「あれを登るのか・・・。」と怯んだ。
その屹立した氷の様子に思わず今日は日和って周辺をウロウロして帰ろうかと思った。。
でもまあ、ああいうものはぶら下がってしまうまでが怖いのであって、登り出せば楽しめる
事は分かっていたので、意を決して準備を開始する事に。
ところがそこで思わぬ誤算が発生した。
当初、滝の右岸をフリーソロで登ってトップロープを張ろうと思っていたのだけど、その右岸
の斜面が実際に登り出すと下から見る以上に難しかったのだ。
最初は深いラッセルに苦しみながら高度を上げていたのだけど、だんだん斜面が急になっ
て来て、もう少しで安心出来そうという位置ではクライムダウンする事はほぼ困難な状況
に。
その辺りではアイスのために刃を砥いで来たバイルを使い、ダブルアックスで登るほどま
でとなり、当然、砥いだ刃は岩と泥壁で丸くなってしまいつつも仕方なくバイルを振った。
結局、ある地点まで登ったところで重要な選択を迫られる事に。
これ以上登って進退極まれば、極端に困難な(あるいは不可能な)決死のクライムダウン
を強いられる。
支点などを作る装備は持って来ていないので、止めるなら今が最後の選択の時だろう。
結局、右岸を登る事は止める事にした。
独りで来ていたし、然るべき装備も知識も無い自分ではここまでが安全を確保出来る範囲
だろうと判断したからだ。
ちなみにこの間、ずっと心拍数は高めだったと思う。。
経験的にこういう斜面を登っていると登っている時は案外難しさを感じないのだけど、いざ、
登る事を逡巡した時にどうにもクライムダウンが困難な状況になってしまっている事が往々
にしてあるからだ。(経験済み。。)
アルパインクライミングってきっと、こういう状況判断を繰り返しながら登山するんだろうなと
怖いような憧憬するような複雑な感慨を持った。

滝を登るための準備の段階で敗退という残念な感じになってしまったけど、その後は回り
込める滝の裏側でバイルを打ち込んだり、身体を少し上げたりして、垂壁の感覚だけでも
体験してみる事に。
やはり、布引の滝のような寝ている傾斜とは違い、体感的に反り返るような感じだ。
バイルを打ち込む際も傾斜が緩い壁よりシビアな振りを要求される。
「これをゆくゆくはリードでか・・・、、」と圧倒されつつも、こういった最初は困難な事もフリー
クライミングのように技術を向上させれば必ず出来るようになるはずだ。
「お、以前より良い感じ。」という自分自身の成長を感じる事は楽しいもので、これはこれで
、今後の技術の研鑽が楽しみになって来た。

帰りは元来た海岸を戻る。
アプローチは国道から高低差50Mほどを海岸まで降りて来ているので、緩くも急でもない
斜面をラッセル。(ツボ足だったので、これはこれで核心だった。。)
帰る頃には吹雪き出し、さながら雪山を登っているかのようなシチュエーションにニヤニヤ
しつつ、車に辿り着いた。