2011年7月9日土曜日

室蘭岳裏沢 2011.7.9

室蘭岳裏沢。
沢登りを始めた当初から来てみたいと思いつつもなかなか訪れる機会のなかった沢。
初心者向けと聞いていたので選んだルートだったけど、思わず誤算があり、その誤算によ
り、なかなか緊張感のある山行となった。

登り始めからきれいな渓相。
「おお、これは確かに初めて沢を登る人にはきれいな景色を堪能してもらえて良いな。」と
まずまずの滑り出しに満足しつつ登る。
その後、渓相は平凡なものとなりつつも、中盤また心が弾むようなゴルジュというか樋状
の滝が目を楽しませてくれた。
結果、ここで引き返していれば、確かに沢初体験の人を連れて来るには丁度良い沢行だ
っただろう。
だが誤算はここより山頂を目指した事にあった。

標高も上がり、源頭付近。
水流も大分細くなり、水の流れる音も静かになって来る。
次第に傾斜も強くなり直登は難しい滝なども現れる。
ここはやや笹の濃い右岸を巻き。
その後、僕は直登出来たけど、同行した二人にはちょっと難しい涸れ滝。
ここも同行の二人には巻きを勧め、ルートを指示。
この時点で初心者みっちーには若干、辛いものとなって来たかも知れないと感じだす。
靴のフリクションで登るようなスラブ状の滝を越えつつ先へ進む。
再び、涸れ滝。
すでに岩登りだ。
トップで登る僕。
ザックを背負ってフリーで登るには後続の二人には危険と判断。
ロープを出し確保する事に。
下に居る二人にハーネスを付け、ロープを結ぶ事を指示。
もうすでに沢初心者を連れて来るような沢行ではなかったな認めざるを得なくなる。。
救いだったのは初心者みっちーが尾根歩き経験はある程度豊富(歩く体力は十分にある
。)だった事とクライミングの経験も多少ある事だった。

地形図を見るといよいよ稜線に迫っていると分かりつつも、高度計による高低差はまだ1
50Mほどはある。
この辺りからは強い傾斜と濃い笹の薮漕ぎ。
初心者の事を考えると実際、戻ろうかとも考えたけど、稜線に出れば登山道があるはずな
のと懸垂をして戻る煩雑さを考えた結果、藪漕ぎを頑張り登る切る事を選択。
雨がぽつぽつと降り出し焦燥感に拍車をかける中、約2時間の苦行の末、これ以上、上は
ないという景色が現れ稜線に出る。
平らになった面を少し歩くと登山道が見えた。
地獄に仏とはこの事だなと安堵。
後続の二人に登山道を見つけた事を伝えると歓喜の声が聞こえて来た。(笑)

嬉々としながら登る二人。
だけど、そんな二人を尻目に僕はまだ緊張感からは解放されていなかった。
むしろ、本番はこれからかも。
そう思った。
なぜなら、これから僕がまだ行った事のない未知の沢を下り、車まで下山しなければなら
ないからだ。
事前の情報では簡単な沢とは言え、下降する沢に入るにはおそらくは源頭付近をまた藪
漕ぎして入渓しなければならないだろう。
沢形を降りるのだから、いずれは沢の底に自然と収束され迷う事はないだろうけど、未知
のルートに降りるというのはやはりあまり気持ちの良いものではない。
このまま登山道を下れれば、どんなに気が楽かと思いつつも、車がデポしてある地点とは
山の反対側に出でしまうため、それは難しい。

室蘭岳山頂。
ともかくも折り返し地点である山頂には着く。
ここからはいわゆる帰路である事実は気を楽にするわずかな助けにはなった。
すでにすっかり気を楽にしつつある同行者の二人に実際はまだこれからも不安要素があ
る事を念押しする。
落胆もせず、不平も言わない山女二人に救われつつ、下降路である滝沢を目指し登山道
を下り出した。

地形図によると尾根筋の登山道を下り、尾根から麓へ降りる辺りに下降する沢への入渓
ポイントがある。
高度計の数値は次第に入渓ポイントが近づく事を示す。
いよいよそろそろかと言う辺りで、尾根筋より入渓ポイント付近全体を俯瞰出来た。
なるほど、大体どこから登山道より藪へ入っても沢筋へと収束しそうだ。
地形的には地形図どおり、そう迷う感じでは無い事に少しほっとする。
そしてさらに。
実は期待するものがあった。
それは沢への入渓ポイントに明瞭な踏み跡。
それに加え、ピンクテープなどによる印がないだろうかという事だった。
テープなどによる印を安易に頼りにする事はよくないけど、(冬場のスキー登山者により付
けられたものである可能性もあるからだ。)それが地形図や高度計によりルートをある程度
把握出来ての事なら、ある程度参考にしても良いだろう。
同行者二人に少し待っていてほしい事を伝え、入渓ポイントの捜査に走る。
最もあやしいのはやはり、登山道が尾根から離れる辺りだろうか。
そしてまさに登山道尾根筋より麓へ向かう辺りにそれを見つけた。
「滝沢コース」。
なんと、登山道の標識に滝沢へ向かう道と共にそちらを示す、標識まであった。(笑)
滝沢へ向かう道は登山道というほど立派なものでは無いにしても、はっきりとそれと分か
る明瞭な踏み跡もある。
加えて、急な斜面にはトラロープやザイルによる手がかりまで残置。
「コース」とまで書いてあり、ここまで懇切丁寧な手助けのある沢で、困難な巻きや長大な
懸垂はまず無いと思って良いだろう。

もちろん、安心しきるのはまだ早いと思いつつも、気はかなり楽になる。
後は困難な藪漕ぎで疲れた足でよろけ、怪我などをしないように慎重に沢を下る。
ところどころに残置してあるロープを頼りに緩い斜面を安全に下り下山を続けると沢筋から
離れる道らしきものが現れた。
地形図を見ると確かに道もあり、どうやら、整備された林道も通っているらしい。
これはいよいよ大丈夫だろうと安堵し、沢筋を離れる。
後はその整備された林道をてくてくと歩き、困難だった薮漕ぎや初心者にはオーバースケ
ールだった行程の話などで沢行を振り返りつつ、デポしてある車に向かった。


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